乳歯が虫歯になりやすい原因と放置のリスク

永久歯と比べて、乳歯は虫歯になりやすいという特徴があります。
ご両親もその点はよく理解されていて、間食の内容について色々と配慮したり、間食のタイミングに注意していたりするのではないでしょうか。
歯磨きの時には、仕上げ磨きをご両親がしている、というご家庭も多いでしょう。
しかし、乳歯はなぜ虫歯になりやすいのでしょうか。
その理由がわかれば、お子さんの虫歯がもっと減らせるのではないかと思います。
今回は、乳歯に虫歯ができやすい理由をご説明します。
乳歯は虫歯ができやすい
乳歯は永久歯とは多くの点で違いがあります。
まず、乳歯は口の中に生えてくる段階ではまだ成熟していません。
エナメル質が薄く、柔らかいまま口の中に生えてきます。
口の中に生えた後、唾液に含まれるカルシウム成分によって、徐々にエナメル質は固くなっていきます。
それまでの間は、虫歯の原因菌が作る酸にとても弱いため、虫歯になりやすいという特徴があります。
また、エナメル質と同じく、その下にある象牙質も薄いままです。
象牙質の中には、歯の神経組織である歯髄があります。
一度エナメル質に虫歯ができると、虫歯の原因菌は薄い象牙質も溶かしてしまい、簡単に歯髄に到達してしまいます。
このように、乳歯は永久歯に比べて虫歯になりやすく、かつ進行も早いという特徴があります。
子供の歯が虫歯になりやすい食生活
お子さんに虫歯が多い原因は、乳歯のエナメル質が柔らかいとか、象牙質が薄いなどという構造によるものだけではありません。
虫歯になるような食生活をしているかどうかも大きな要因です。
【(1)スポーツ飲料を与える】
お子さんは体をよく動かします。
夏場は、特にこまめな水分補給が求められます。
しかし、その時に糖分をたっぷり含んだスポーツ飲料は、乳歯にとって大敵です。
こまめに糖分を口に入れることになるので、長い時間、虫歯になりやすい環境になっています。
スポーツ飲料は飲むタイミングを決めて、それ以外の水分補給は水やお茶などを摂取するように、親が管理・指導しましょう。
【(2)間食が多い、時間を決めないで食べること】
先ほどのスポーツ飲料と同じですが、食べる時間にメリハリをつけず、だらだらとおやつを食べる習慣は、口の中に甘いものがずっとある状態になりますので、虫歯のリスクを高くします。
間食も、糖分が多いものは極力避けるべきでしょう。
乳歯が虫歯になりやすい場所
乳歯の形は永久歯と少し異なります。
歯の表側や裏側は比較的見やすく、歯磨きの時にも歯ブラシを当てやすいため、磨き残しはほとんどありません。
しかし、乳歯で虫歯になりやすいところは、歯と歯の間の部分です。
特に奥歯(乳臼歯)の歯と歯の間は虫歯になりやすい場所です。
食べ物が詰まりやすい空間になっていて、歯磨きのときにも見えにくく、磨き残しをしやすい場所だからです。
これは大人でも同じことが言えます。
言い換えると、この虫歯ができやすい場所を中心に仕上げ磨きをしてあげることで、虫歯の発生するリスクを下げることができます。
乳歯の虫歯を放置するリスク
乳歯の虫歯も、永久歯と同じく放置してはいけません。
進行が早いため、歯髄をつたわって簡単に乳歯の根の先に到達します。
乳歯の真下では、永久歯が生える準備をしています。
そこに虫歯の原因菌が感染すると、後から生えてくる永久歯の発育を邪魔するといった悪影響を及ぼしますし、それが周囲の永久歯にも影響が広がってしまいます。
また、乳歯の虫歯も永久歯の虫歯と同じく、痛みがあります。
化膿してしまうこともあるでしょう。
初期の虫歯のうちに簡単に治療が終わるようにしておかないと、お子さんの歯科医院に対する印象が「痛いことをされる場所」といったトラウマになってしまい、その後の歯科治療について、なかなか受け入れてくれない、ということにも繋がりかねません。
また、乳歯の時期に虫歯になると、永久歯の生えるスペースが確保しにくくなります。
その結果、永久歯の歯並びが乱れたり、あごの骨の発育が遅くなり、食物を食べる「咀しゃく」もしにくくなる、という悪影響がどんどん拡大してしまいます。
ご家庭でもできる予防方法
乳歯を虫歯から守るために、ご家庭でできることをいくつかご紹介します。
まず、虫歯などの細菌に感染しやすい時期が3つあります。
生後およそ19~30ヶ月の時期、6歳臼歯が生えてくる時期(5歳から6歳の頃)、そして12歳臼歯が生える頃です。
この時期は「感染の窓」と呼ばれており、この時期に感染しなければ、それ以後は虫歯に感染しにくいと言われています。
このうち、最初の生後およそ19~30ヶ月の時期は、乳歯が生えてくる時期です。
この時期に、大人とフォークやスプーンなどを共有しないように注意すると、虫歯の原因菌に感染するリスクが減らせます。
この他には、先ほども述べたように、甘いものを与えるタイミングを決めて、長時間ダラダラと食べさせないように気をつけましょう。
食後には歯磨きをして、ご両親による仕上げ磨きも行ってください。