フッ素が歯に良いのはなぜ?効果的な働きと注意点

歯磨剤のテレビコマーシャルや雑誌広告、店頭にある商品パッケージなどを見てみますと、「フッ素で歯を強くしましょう」など、フッ素入りの歯磨きをおすすめするような表現をよく目にします。
そのため「フッ素入りの歯磨剤は歯に良い」というイメージをお持ちの方が多くおられるかと思います。
しかし、フッ素がどういうメカニズムで、歯にどういうメリットをもたらすのかまでは、知らないという方がほとんどではないでしょうか。
今回は、フッ素がどのようなメカニズムで歯に効果をもたらすのかを見ていきます。
フッ素とは
フッ素は地球上に広く分布しています。
私たちが日ごろ摂取している食品や飲み物にも、フッ素が含まれ、毎日なんらかの形でフッ素を摂取しています。
緑茶、魚介類、海藻、穀物、野菜、果物など、多くの食品に含まれています。
フッ化物は、歯や骨をつくる石灰化のプロセスに欠かせない物質です。
欧米では必須栄養素として、摂取すべき量が決められています。
歯に効果的なフッ素の働き
フッ素が歯に及ぼす効果には次のものがあります。
【歯の表面を強化する】
歯の表面にあるエナメル質には、ハイドロキシアパタイトという成分が多く含まれています。
しかし虫歯になると、虫歯の原因菌の作り出す酸によって、エナメル質は溶け出してしまいます。
フッ素は、ハイドロキシアパタイトを、一部が置き換わった「フルオロアパタイト」という安定した構造に変える働きがあります。
これにより、ハイドロキシアパタイトより強い歯になります。
【初期虫歯の再石灰化】
初期の虫歯は、歯に白っぽい斑点としてできる場合があります。
これは、歯が虫歯菌の酸によって脱灰しはじめた状態です。
この時期であれば、フッ素で歯の再石灰化を促して、エナメル質の修復が期待できます。
【虫歯菌を抑制する】
口腔内には700種類以上の細菌がいます。
歯磨きやマウスウォッシュだけで、虫歯菌をすべて除去することはできませんが、フッ素には虫歯菌の作り出す酵素や菌自体を抑制し、歯に付着するのを阻止するという作用があります。
フッ素を塗布する方法
フッ素を使う方法としては、以下の3つが一般的に行われています。
【家庭でフッ素配合の歯磨き剤を使用する】
毎日の歯磨きでフッ素配合の歯磨き剤を使用します。
多くのご家庭で、一番広く行われているのではないでしょうか。
日本では、商品に含まれるフッ素濃度は1500ppmが上限です。
フッ化物配合歯磨剤による虫歯の予防効果は15~30%で、長期間継続使用した場合には、およそ50%まで上昇するといわれています。
ドラッグストアには多数のフッ素入り商品がありますし、歯科医院で販売している歯磨き剤はフッ素濃度が高く、安心して使えます。
歯磨き後のすすぎは1回にとどめてください。
歯磨剤に配合されるフッ素は、磨いている間だけではなく、歯を磨いた後でもフッ素が残ることで少しずつ唾液にまざり、口全体に広がることで虫歯抑制効果を発揮すると言われているからです。
【歯科医院でフッ素を塗布してもらう】
乳歯や生えかけの永久歯に対して、歯科医師が高濃度のフッ素を歯に直接塗布する方法です。
乳歯や生えたばかりの永久歯は、まだ完成途中にあるため、虫歯菌に対してとても弱い状態です。
また、歯ブラシも上手にしきれない時期ですので、虫歯になりやすい時期とも言えます。
年2~4回程度のペースでフッ素を塗布すると、虫歯抑制効果が30~40%になると言われています。
歯科医院で定期的にフッ素を塗布してもらう時には、歯科医師や、歯科衛生士が口の中を確認して、清掃してからフッ素を塗布しますので、より効果的な虫歯予防に繋がります。
【フッ化物洗口】
フッ素洗口液でうがいをする方法です。
週5日(ほぼ毎日)する方法か、週1回だけ行う方法の2種類があります。
フッ化物洗口での虫歯抑制効果は40~50%と言われています。
毎日行う場合と、週1回行う場合とでは、それぞれ使用するフッ素濃度が異なります。
決められた濃度で調整された洗口液でしたら、誤って飲み込んでしまっても、体への害(急性毒性)はありません。
お子さんが洗口液を使う場合は、お子さん自身で調整しないよう、保護者の注意が必要です。
フッ素を取り入れる時の注意点
フッ化物経口投与の際に中毒が発現してしまう量は、体重1kg 当たり約5〜10mg/kg です。
下痢や腹痛といった消化器症状が現れる量は約3〜5mg/kgとなっていますので、お子さんがフッ化物を使うとしても、安全性については問題ありません。
ただし前提として、歯科医師や保護者の方による管理は重要です。
フッ化物歯面塗布剤の不用意な飲み込みを防止するため、注意すべきことがいくつかあります。
1)お子さんの手の届く所でフッ化物液を保管しないようにしましょう。
そして、保護者が1回分に小分けしたものを準備するようにし、お子さんだけで触ることは避けましょう。
2)飲み込むことを避ける配慮として、歯科医院ではお子さんが座位の状態でフッ化物を塗布し、バキュームや排唾管などを使用して、口の中の唾液を適宜吸引するようにします。
3)フッ化物の塗布終了後は、時々唾を出すように指示したり、バキュームで唾液を吸い取ったりします。
また、終了後30分間は水を飲まないように指導します。
4)フッ素塗布について拒否が強いお子さんには、無理に塗布することは避けてください。
飲み込むリスクの他に、塗布する器具で口の粘膜を傷つけてしまう危険性があります。
まとめ
このように、フッ素を使うことについて使い方や注意点をまとめました。
安全に使うことができますので、ぜひ皆さんの日々の口腔ケアに、フッ化物を取り入れてください。