小児歯科

乳歯と永久歯生え変わる時期はこんな注意が必要です

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  • 2022.01.05

歯は小学生低学年から子どもの歯が抜けはじめ、子供の歯から大人の歯へと変わっていきます。

最近はあまり聞くことがなくなりましたが、上の歯が抜けたときには家の軒下へ、下の歯が抜けたときには屋根の上へ投げると

「丈夫な大人の歯が生えてくる」

と言われていたのを今でも覚えています。

人間の歯は一生に一度しか生え変わることがない為、歯はとても大切ですね。

 

今回は子供の歯から大人の歯に生え変わる時に注意することなどをご紹介します。

 

《目次》

■乳歯と永久歯の歯の厚みはどれくらい違うの?

■乳歯・永久歯はそれぞれ何本?

■乳歯の虫歯は永久歯に影響するの?

■生え変わりの時に注意すること

■最近増えてる大人乳歯ってなに?

■大人乳歯を長く持たせるには?

■まとめ

 

 

 

■乳歯と永久歯の歯の厚みはどれくらい違うの?

 

子供の歯のことを乳歯、大人の歯のことを永久歯と言います。

乳歯は永久歯に比べると象牙質やエナメル質が薄く、永久歯と比べると約1/2。

エナメル質とは表面にある層のことで、その内側に象牙質があり、象牙質のさらに内側に歯髄(神経)があります。

虫歯の進行はエナメル質や象牙質などが、虫歯菌によりどの程度まで蝕まれているかによって5段階で判断されます。

永久歯はエナメル質が乳歯に比べると厚いため、象牙質や歯髄まで虫歯菌の進行するまで時間がかかります。

エナメル質は虫歯菌によって溶かされても、痛みを感じることはほとんどありませんが、象牙質や歯髄まで虫歯が進行すると痛みを感じるようになります。

その為、永久歯に比べてエナメル質の薄い乳歯は、痛みを伴う虫歯になりやすいので注意が必要です。

 

 

 

■乳歯・永久歯はそれぞれ何本?

 

乳歯と永久歯の本数が変わるのは、子供から大人に成長すると共に、顎の大きさも変わってくる為です。

生まれてしばらくして生える乳歯は顎がまだ小さいため、永久歯と同じ本数の歯が生えるためのスペースが無く、乳歯として生える歯の本数は永久歯に比べて少ないのです。

骨格が十分に成長した頃に乳歯が抜け落ち、体と顎の発達によって歯が生え変わる。人間の体はすごいですね。

 

・乳歯

乳歯は全部で20本です。

生まれて6ヶ月くらいから歯が生えはじめ、3歳くらいには生え揃います。

 

・永久歯

永久歯は親知らずまで入れると32本です。

小学生1年生になる6歳くらいから12歳くらいまでに生え揃います。

 

 

 

■乳歯の虫歯は永久歯に影響するの?

 

「乳歯の時に虫歯になってもどうせ生え変わるから大丈夫!」は大きな間違いです。

乳歯の時の虫歯は永久歯に生え変わっても次のような様々な悪影響を与えてしまいます。

 

・永久歯の虫歯になるリスクを高める

虫歯になるかならないかはお口の中の虫歯菌の数で変わります。

乳歯の虫歯が多いということは、それだけお口の中が「虫歯になりやすい環境」になってしまっているということです。

乳歯の時に虫歯になっていたものが永久歯に生え変わったからといって、お口の中の環境がリセットされるわけではないのです。

また、永久歯に生え変わった歯の隣の歯が虫歯だったらどうでしょう?

隣の虫歯の影響を受けて、新しく生え変わった永久歯も虫歯になってしまうリスクが高くなります。

 

・永久歯の歯並びに影響してくる

乳歯での虫歯がひどくなると、抜かなければいけないこともあります。

乳歯には永久歯が正しい位置に生えてくるための誘導の役割を担っています。

そのため、虫歯や転んでしまったなど、自然な生え変わり方ではない理由で乳歯を失うと、永久歯がズレて生えてきてしまう可能性が高くなります。

また、虫歯などで乳歯を抜いたままで放置していると、そこであまり食べ物を噛まなくなってしまうので、顎の骨の成長にも悪影響を与えます。

顎の骨が充分に成長しないまま永久歯が生えてくると、結果として永久歯が全て生え揃った時に歯並びが悪くなることもあります。

 

・顎の発達に影響する

虫歯が進行して象牙質や神経まで達すると、ひどく痛みがでてきます。

食事をする際に痛みがあると無意識のうちに痛くない方で噛むようになります。食事をする際、同じ方でばかり噛んでいると顎や口周りの筋肉のつき方が変わってくる為、顎の発達に影響します。

 

・栄養状態が悪くなる

乳歯の虫歯がひどくなると、食べ物をうまく噛むことができません。

食べ物を細かくなるまでしっかり噛むことで、体は栄養分を吸収しているので栄養状態が悪くなるという影響もあります。

 

虫歯は初期治療が大切です。

乳歯の時に虫歯になったとしてもしっかり治療していきましょう。

 

 

■生え変わりの時に注意すること

 

永久歯に生え変わることによってエナメル質や象牙質は乳歯と比べて約2倍の厚みになります。ですがまだまだ油断は禁物です。

“2年間は永久歯になっても虫歯になりやすい”と言われています。

永久歯とはいえ、生えはじめの歯ほどエナメル質が柔らかく酸に犯されやすい為です。

この時期の虫歯は一度なってしまうと進行も早いので注意してください。

 

また最初に生える永久歯を「六歳臼歯(第一大臼歯)」と言います。

六歳臼歯は噛む力が強いとても大切な歯です。

乳歯の奥に生える為、歯ブラシが届きにくく磨き残しができやすいので注意しましょう。

 

 

 

■最近増えてる大人乳歯ってなに?

 

最近は乳歯から永久歯に抜け変わらない人も増えています。

乳歯から永久歯に抜け変わらないことを「大人乳歯」と言います。

その原因のほとんどは生まれつきで、乳歯から生え変わる時の歯がグラグラすることもありません。

大人乳歯は病気ではないので心配しすぎず歯科医に相談してみてください。

 

 

 

■大人乳歯を長く持たせるには?

 

大人乳歯と分かったら長く持たせるように丁寧にケアすることが大切です。

歯磨きの磨き残しは虫歯の原因になります。

乳歯は永久歯よりエナメル質や象牙質が薄いため、酸の影響を受けやすくなっています。歯磨きは丁寧に正しく行いましょう。

また虫歯の原因となる糖の摂りすぎにも注意が必要です。

 

 

 

■まとめ

 

いかがでしたか?

子供の歯(乳歯)と大人の歯(永久歯)の違いをおわかりいただけと思います。

小さいお子さんは特に自分で歯磨きができるようになったとしても、必ず磨き残しがあります。

磨き残しは虫歯の原因になるので、最後の仕上げは親御さんが行ってあげることをおすすめします。

また歯の生え揃う時期も本数も個人差はあるので、あまり神経質にならず「永久歯の数が少ないかも・・・」「乳歯からなかなか永久歯に生え変わらない」と不安な方は早めに歯科で診てもらうようにしましょう。

 

執筆/ひらかわ歯科医院 院長 平河貴大