ガムを噛めば虫歯予防になる?実態と気をつけたいこと

目次
ガムを噛めば虫歯予防になるのか
結論から申し上げると「キシリトールガムを噛むと虫歯予防効果が期待できます」。
キシリトールが歯に良いことをご存知な方は多いと思います。
ただし、一言にキシリトールガムと言っても、市販のものや歯科医院用まで、配合物による違いがあります。
商品ごとの特徴をよく理解して噛まないと効果は薄くなってしまいます。
では、そもそもキシリトールとはどういったものなのかをご説明いたします。
≪キシリトールとは≫
白樺や樫(かし)の木を原材料にした天然の甘味料です。
キシラン・ヘミセルロースという成分が主となっています。
キシリトールの多くはフィンランドで生産されています。
大きな特徴として、感じる甘さは砂糖とほぼ変わらないのにも関わらず、カロリーは3/4しかないということです。
言い方を変えると、味は変わらないのにカロリーを25%も抑えることができます。
そしてその安全面では、WHO(世界保健機関)合同食品添加物専門家委員会(JECFA)やFAO(世界食料農業機関)において高い安全性を認められています。
また、私たちの生活において身近な食品である、ラズベリーやイチゴ等の果物、レタス・ホウレンソウ・カリフラワー等の野菜などに含まれています。
ただし、キシリトールを摂取しすぎると下痢になる可能性もあります。目安としては20gから30gを超えないようにしてください。
キシリトールガムの虫歯予防効果
キシリトールという言葉はガムのCMにより広く知られたと思います。
そのCMでは「キシリトールは虫歯予防に効果がある」という付加価値を付けたおかげで、よく売れたとも聞きます。
では、具体的にキシリトールガムの虫歯予防効果とはどういったことがあるのでしょうか。
虫歯菌を減らす
細菌の塊である歯垢には虫歯菌が含まれています。
この虫歯菌が歯を溶かす酸を出しています。
しかし、虫歯菌は糖を餌にして酸を作り出しているので、糖分たっぷりのガムからキシリトールガムに代わることにより、エネルギーを取ることができず死んでいきます。
習慣的にキシリトールを食べることで、虫歯菌の数を減らすことができます。
再石灰化を促進する
歯は「脱灰(だっかい)」という虫歯菌が作り出す酸のせいで歯が溶ける現象と、唾液の力で溶けた歯を戻す「再石灰化(さいせっかいか)」を行っています。
再石灰化よりも脱灰が多く行われた時に虫歯が進行していきます。
キシリトールは虫歯菌を減らす効果があるので脱灰よりも再石灰化が多く行われるようになります。
また、唾液の中に含まれているカルシウムと結びつき、それが歯の表面に付くことにより、強い歯を作ることができます。
唾液の分泌を促進する
ガムを噛むことで多くの唾液が分泌されます。
これはキシリトールが砂糖と同じくらいの甘さがあるため、味覚が刺激されて唾液の分泌を促進させます。
唾液が多く出るということは再石灰化の促進に繋がり、強い歯を作ることができます。
歯垢が落ちやすくなる
キシリトールの効果で虫歯菌の数が減ると歯垢も少なくなり、歯垢自体がネバネバしたものからサラサラのものに変わります。
すると、歯の表面から剥がれやすくなるので、歯磨きの効果が上がり、より簡単に歯垢を除去することができます。
キシリトールガムを購入する時の注意点
キシリトール配合のガムはスーパーやコンビニ、インターネットなど、お手軽に購入することができます。
しかし、選ぶ時に3点だけ注意をしてもらいたいことがあります。
キシリトールが50%以上含まれているか
「キシリトール配合」を商品のパッケージなどに書かれていても、それが50%以下なら意味がありません。
キシリトールは天然素材のため高価です。
メーカーによってはできるだけ抑えたいところもあるようで、キシリトールの配合量は市販のもので30%から70%のものが多いと聞きます。
しかし、パッケージには親切に配合量の%表記はしていないので以下の計算式を参考にしてみてください。
キシリトール(g)÷炭水化物(g)×100
[例1]
キシリトール7.0g÷炭水化物20.0g×100=35
35%配合なので買わない方がいい
[例2]
キシリトール10.0g÷炭水化物15.0g×100=66.6666…
約67%配合なので買ってもよい
甘味料が入っていないこと
キシリトール配合率が高くても、キシリトール以外で糖類が入っていると意味がありません。
キシリトールの虫歯予防効果を発揮させるためには、糖類0%のものを選んでください。
キシリトール以外ではエリスリトールやマルチトールなどが、砂糖に近い甘味度をもっています。
このように、成分の末尾に「トール」とつくものはキシリトールと同じく「糖アルコール」類に属しており、虫歯にならない特徴を持っています。
酸性物が含まれていないこと
果汁やクエン酸が含まれているものは避けた方がよいです。
それ自体が酸性のものは、度合いにもよりますが、脱灰の危険性が0%ではないからです。
歯科医院専用キシリトールガムと食べ方
歯科医院で取り扱っているキシリトールガムの特徴をまとめてみました。
また、合わせて効果的な食べ方もご紹介いたします。
≪歯科医院専用キシリトールガムの特徴≫
キシリトール100%配合
キシリトール以外の甘味料は含まれていないので、虫歯予防の効果が高い。
カルシウムが配合されている
リン酸カルシウムが配合されているので、再石灰化を促進する効果がります。
リン酸カルシウムとは歯の主成分なので高い効果が見込めます。
歯につきにくい
ガム自体が歯につきにくいベースを使用しているため、仮歯や入れ歯、矯正装置を使用している方にも優しいガムになっています。
少し硬い
市販のガムよりもベースが少し硬いので、噛む力を鍛えることが可能です。
≪効果的な食べ方≫
食べるタイミング
歯の強くするなら歯磨き後、歯垢を落としやすくするには歯磨き前に噛んでください。
歯磨き後のお口の中が清潔な場合は、再石灰化の促進に繋がります。歯磨き前の歯垢が残っている場合は、ガムを噛むことにより唾液が多く分泌され歯垢を洗い流し、歯磨きを効率的に行えます。
唾液の分泌が減る就寝前に噛むのもよいでしょう。
噛む時間
5分から15分噛んでください。
キシリトールガムは味の持続性は少ないですが、大切なのは唾液を分泌させ、お口の中全体にキシリトールを行きわたらせることです。
これにより虫歯菌に効果的に働いたり、再石灰化の促進にもなります。
可能であれば、味のする内はなるべく唾液を飲み込まず、お口の中全体にキシリトールを行きわたらせると、より効果的です。
噛む量
虫歯予防に必要な1日のキシリトールの量は5gから10gが目安です。
歯科医院専用のキシリトールガムには1粒につき1.3gが含まれているので、朝・昼・晩の食前か歯磨き後、就寝前の歯磨き後の様に回数を分けて噛むと効果的です。
キシリトール入りのお菓子
キシリトールガムについてご紹介をしましたが、実はガム以外にも砂糖の代わりにキシリトールを使用したお菓子があります。
それは「チョコレート」や「ガム」、「ラムネ」です。
小さなお子様にとってはガムよりも嬉しいのではないかと思います。
ガムと同じくキシリトール100%のものがあり、保護者の方にとってはお子様のおやつとしてお使いいただいても安心です。
これらは良い食べ物ではあるのですが、一般的に広く知られていないのが残念ではあります。
インターネットからでの購入ができるので【キシリトール お菓子】と検索していただくと、たくさん見つかると思います。
当院で扱っているキシリトール入りのガム
グリコの【歯科専用ガム POs-Ca F(ポスカ・エフ)】という商品です。
キシリトール100%で歯の再石灰化を促進し再結晶化をしてくれる「第3世代のガム」と言われています。
さらに歯の質を強めてくれたり、再石灰化を促進してくれるフッ素も含まれているので、虫歯予防にとってはとても効果的なガムです。
まとめ
ガムによる虫歯予防で大切なのは習慣化です。
虫歯予防に対して効果的ではあるので、お薦めはできますが、効果が出始めるのが早くて3か月ほどと言われています。
噛むのを止めると虫歯菌が元の状態に戻ってしまいます。
また、キシリトールガムを噛んでいるからといって完璧な予防ではございません。
虫歯にならないためには毎日の正しい歯磨きと歯科検診に定期的に通うことが必要です。
フッ素などと同様にキシリトールもお口の中の健康を維持する補助的な役割としてお考え下さい。
キシリトールを効果的に活用するためにも、活用方法と正しい知識を知り、楽しみながらお使いください。
執筆/ひらかわ歯科医院 院長 平河貴大