素材ごとに考える入れ歯の特徴

≪ 目次 ≫
歯科医院で入れ歯を作る時に、皆さんはどんな点を優先して考えるでしょうか?
入れ歯は長く使っていくものなので、いかに自分の口に合うかがとても重要ですよね。
現代では様々な素材の入れ歯があるので、私たちは自分のお口に合った素材を選ぶことができます。
費用を考えるのであれば、保険適用のプラスチック素材の入れ歯がよいでしょう。
保険適用の入れ歯は食べ物を食べるために、必要最低限の機能しか無いと考えている方もいらっしゃると思います。
確かに保険診療とはあくまでも「病気に対して必要最低限の治療」という位置づけです。
しかし、医療技術が発達した現代においては保険適用の入れ歯であっても、きちんと調整を行いながら使用することによって、問題なく
用していくことが可能です。
しかし、もっと歯茎に優しい入れ歯にしたかったり、食べ物をより美味しく食べたいという方はそれぞれに適した素材を選ぶとよいでしょう。
今回は入れ歯に使われる素材の特徴について考えていきましょう。
食事を美味しく食べたいなら金属床義歯
味覚は舌だけで感じるものではございません。
「冷たい」や「温かい」などの温度を感じる事も、食べ物を美味しく食べる時に大切なことです。
総入れ歯になると、広い部分が入れ歯によって覆われてしまいます。
プラスチックなどの素材に覆われると、熱伝導が悪いため温度変化を感じにくくなってしまいます。
しかし、入れ歯の床部分を金属の素材に変えることにより熱伝導が良くなります。
熱伝導が良くなると温かいものは温かく、冷たいものは冷たく感じることができるようになるため、食事の温度を自然に感じられるようになります。
また、床部分を金属の素材にすると、プラスチックの素材と比べてお口の中に接する部分を薄く作ることができます。
薄く作ることによって得られるメリットは、話しやすくなるということです。
入れ歯を装着した状態で言葉を発する時に、違和感が少なくなり発音がしやすくなります。
金属でできているため、プラスチックの素材と比べると壊れにくいという利点もあります。
さらに清潔に使えるのも大きなポイントです。
プラスチックの素材は傷がつきやすいため、歯ブラシなどでお手入れをしている場合、力加減が強すぎると細かな傷ができてしまいます。
するとその部分に汚れが入りこみ、不潔な状態になってしまいます。
長い時間汚れが付着した状態でいると、歯ブラシでも磨いても汚れが落ちにくくなってしまいます。
汚れが落ちにくいからといって歯ブラシで強く磨いていると、更に傷を付けてしまう悪循環になってしまいます。
しかし、金属の素材の場合は汚れが付きにくく、歯ブラシなどで軽く磨くだけでも汚れは落ちやすくなります。
≪金属素材の弱点≫
金属は入れ歯にとって優秀な素材であることはご理解いただけたと思いますが、残念ながら弱点もあります。
それは金属アレルギーの方は使用できないという事です。
使用できる金属にも種類はありますが、歯科医師とよく相談しないといけません。
また、入れ歯が合わなくなった際に修復が難しくなります。
プラスチックの素材の場合は、プラスチックの盛り足しをして調整を行いますが金属部分は盛り足すことができません。
どうしても合わない場合には作りかえが必要になります。
もっと歯茎に優しい入れ歯にしたいならシリコン義歯
シリコン義歯とは歯茎に当たる部分の一部を、シリコンという柔らかい素材を使用する入れ歯のことです。
プラスチックの素材と比べ柔らかいため、入れ歯を入れて食べ物を噛んだ時に痛いとお悩みの方に利用されています。
現在使用されている入れ歯の一部を、シリコンに変えることもできるのも便利なポイントです。
お口の中は髪の毛が1本入っただけでも不快に感じるほどデリケートです。
入れ歯を入れることにより、歯茎やお口の中の粘膜に当たることによるストレスは食欲にも影響を与えることがあるので、少しでも快適な入れ歯にしたいですよね。
また、シリコンはプラスチックより適度な弾力があるため、歯茎にしっかりと吸着します。
顎の骨や歯茎が少なくなってしまっても、入れ歯が比較的安定するので使いやすいでしょう。
食べ物を噛んだ時には圧力が掛かりますが、通常の歯であれば歯根膜というものがクッションの役割を果たします。
しかし、入れ歯の場合は歯根膜が無いため、噛んだ時の圧力が歯茎に直接掛かってしまいます。
シリコン義歯はその柔らかさが、入れ歯と歯茎との間のクッションの役割をしてくれることが歯茎に優しい理由です。
≪シリコン素材の弱点≫
シリコンは金属と比べて汚れが付きやすい素材です。
お手入れを怠ったまま使用していると、菌が繁殖してお口の中のトラブルの原因にも繋がります。
そのため、お手入れには気を使う必要があります。
まとめ
入れ歯の素材にはたくさんの種類があります。
金属の素材であれば熱伝導がよいため、食事をより美味しく感じることができます。
お手入れもしやすいのも良い点です。
シリコンの素材であれば柔らかいため、歯茎に優しく食事の際の痛みを軽減させることができます。
吸着力も高いため使いやすい入れ歯になります。
プラスチックの素材で不具合を感じていた方は歯科医院で相談をすると、自分に合ったより良い入れ歯にしていくことができるでしょう。
執筆/ひらかわ歯科医院 院長 平河貴大